MIDORI | スティーヴン・ハートキ インタビュー動画
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スティーヴン・ハートキ インタビュー動画

2014.09.30

スティーヴン・ハートキ インタビュー動画

10月8日(水)現代曲のリサイタルで演奏される「根付」の作曲者スティー
ヴン・ハートキのインタビュー動画が届きました。

子どもの頃に受けた音楽の影響、「根付」について、その背景、作曲の過程、演
奏者や聴衆に求めるものは?といった質問に次のように答えています。

Q:幼少期に受けた影響は?
A:子ども頃、マンハッタンで少年合唱団に入って教会などで歌ってい
て、古楽やルネサンス音楽などに親しんだ。古い音楽に親しんだ者が近
代音楽に興味をもつことだってある。ブリテン、ストラヴィンスキー、
ブーレーズ、ベルク、バルトークなどに惹かれたし、これまでにない表
現が使われているので、伝統的西洋音楽ではない音楽にも興味を持った。

Q:「根付」のバックグラウンドやインスピレーションについて
A:アメリカ議会図書館マッキム基金からヴァイオリンとピアノのため
の曲を委嘱された。ロサンゼルス群立美術館の根付のコレクションが一
番気に入っていて、カタログから13の作品を選び、最終的に6つの作品
をテーマに選んだ。単純に芸術品として美しいだけでなく、作品の題材
としてドラマ性があると思ったから。

Q:作品について
A:1楽章の「天狗」は、信仰の薄い者を罠にかける妖怪の話で、ピア
ノの速いパッセージが不穏な雰囲気を出し、妖怪を表現しているのに対
し、ヴァイオリンはコラール風のメロディーを弾く。途中でその役割が
逆転するが、これは天狗がその姿を変えたことを意味する。そして、音
楽はどこかへ行ってしまうかのように消えていく。

2楽章の「平忠盛と油泥棒」は、侍と泥棒に間違えられた奉公人の取っ
組み合い。ピアノのコードとヴァイオリンの速いパッセージが逃げよう
とする様子を表現している。最後は、侍が攻撃をやめ、奉公人に説明を
求める。

3楽章の「三味線を弾く狸」では、ヴァイオリンを三味線のように構えさせて、
ピックを使ってピチカートすることによって三味線のような音を表現し、ピアノ
は内部をたたいてパーカッションような役割を果たしている。日本の伝統的音楽
を思わせるようなリズムや音を意識。一番日本を感じさせる楽章。

4楽章の「獏」は、伝説上の悪夢を食べる妖怪だが、西洋文化(アメリ
カ文化)では、大人は子どもに「お化けなんていないよ」と教えるのに、
「お化けはいるけれども、悪夢を食べてくれる」という文化が日本には
ある。獏は象とライオンを融合したような生き物で、ヴァイオリンに極
度のプレッシャーをかけてスクラッチ音を弾かせるようにして、獏の泣
き声をイメージさせている。ピアノは静かなランドスケープを表現する
ようなデリケートなアルペジオを弾く。ヴァイオリンのハーモニクスは
悪夢が食べられる夜の雰囲気を出している。

5楽章の「金持ちを地獄へ運ぶ鬼たち」の話は、金持ちの男が籠にのっ
て旅に出ているが、いつもの運搬人が7匹の鬼にとってかわっているこ
とに気付いていない。7匹の鬼は金持ちの男を地獄へと運んで行く。冒
頭は西洋で人を呼ぶ時に使われる口笛のような音をヴァイオリンが奏で、
音楽はどんどんと加速して地獄へ向かっていく。

最終楽章の「山の上のお屋敷が彫られた知恵の宝玉」は、穏やかな山の
光景が描かれた美しい涙型の象牙の根付で、松の木の間からお屋敷が見
える。スコアをみるとおそらく4カ所くらいしかヴァイオリンとピアノ
のリズムが重なるところがない。ヴァイオリンとピアノがそれぞれスラ
イドしながら重なり合っている。そうすることで、昔の自然の風景を表
現している。

Q:作曲過程について
A:「根付」については、委嘱を受けた時期をあまりよく覚えていないが、
たぶん2002年頃で、作品を完成させたのが2011年なので、完成まで約10
年かかっているが、作曲の作業自体は半年程度だと思う。作曲は子供を
産む苦しみに例えられることがあるけれども、その苦しみを忘れてしまっ
ている。そうでなければ、また作曲するなんてことはないからね。

Q:演奏者に求めることは?
A:伝統的西洋音楽の場合、演奏家は楽譜に書かれたことをなぞっていく
ような印象がある。これまでにない表現をするときも、基本的には伝統
的な記譜法を用いることで誰もが共有できる。具体的な指示をスコアに
明確に示していれば十分だと思うので、作曲家は演奏の場に立ち会う必
要はない。指示が明確で、どの演奏においても常に同じように演奏され
る方が良いと思うが、テンポやフレージング、雰囲気、カラーなど解釈
は個人によって異なるだろう。作曲は他人に解釈させるという点で、非
常に責任あることだと感じる。

Q:聴衆に対して
A:この作品は、色々な感情が盛り込まれているので、楽しんでくださる
ことを望んでいます。

Q:手本としている人は?
A:特に・・・いないが、思いついたら電話するよ(笑)。

(interview: Clara Kim、概訳:佐野浩介)