11月の日本ツアーは、連日、南は福岡から北は函館まで、日本各地を訪れました。
もうすぐ演奏旅行をするようになってから30年になりますが、常に新しい発見に出会う喜びを噛みしめています。
例えば、先月のツアーでは下北半島のむつ市を初めて訪ねた時のことです。
八戸から2時間半の車中から海岸沿いを眺めていると、如何にもこの地域には野生の馬がいると聞いた気がしてきて、迎えの方に尋ねてみると、それはどうやら青森県の天然記念物に指定されている「寒立馬」(かんだちめ)のことで、それなら、むつ市から30キロほど離れた尻尾崎にいるとのこと。元来動物には興味があり、是非にも「野生」の馬を目にしたかったものの、残念ながら見ることができませんでした。そうなれば余計に探究心が湧いてきて、この品種は、実は野生ではなく、その地域でのみ周年放牧されているということを、つきとめました。
寒立馬に関する続リサーチでは、写真を見る限り、“馬”と言われて真っ先に思い浮かべるいわゆるサラブレッドのようにスレンダーではなく、厳寒にも耐えうるであろうがっしりした立派な体格です。この寒立馬の祖先は、主に軍用馬に使われた南部馬で、後に他種との交配によって寒さと粗食に耐え、持久力に富む比較的小柄な「田名部馬」が生まれ、さらなる改良のためにブルトン種(原産地フランス)との交配が行われ、大型種の「寒立馬」が完成したわけです。一時期、9頭にまで激減したため、保護されることによって、最近はだいぶ数が増えたそうです。
日本の天然記念物には、鳥類が多い気がします。例えばトキ、白鳥、雷鳥、オナガドリなど。哺乳類ではニホンカモシカ、イリオモテヤマネコなど。私はどちらかというと鳥類よりも哺乳類に愛着があるので、ついそちらのリサーチに偏りがちになります。
最近「ハイブリッド」という言葉が、車だけではなく動物にも使われるのを皆さんはご存知でしたか?
天然記念物→絶滅危惧種→シロクマを調べていたら、「ハイブリッドシロクマ」という種が現存していることがわかりました。
温暖化によって北極に生息していたシロクマが、陸地に餌を求めて出現するようになり、一方でグリズリーも北極圏が暖かくなったことで、生活圏が広がり、両者の生活圏が重なった結果、シロクマとグリズリーの赤ちゃん「ハイブリッドシロクマ」が誕生。
種の近い交配は子孫を残せますし、陸地でもより生活しやすくなったという、絶滅を危惧されているシロクマの無意識の保身かと考えられています。
そういえば、今回のツアーでリサイタルを行った函館のホールにシロクマの剥製が置いてありました。近い将来、純粋なシロクマは剥製か、動物園でしか見られなくなるかもしれませんね。人間の行動が地球温暖化に拍車をかけ、自然環境を左右し、果ては自然破壊につながっていくのを感じずにはおれません。
ベッドの中で、もぞもぞとパソコンで「ハイブリッド(雑種)」のリサーチを続けると、雄ライオンと雌トラのハイブリッドの「ライガー」、狼と犬のハイブリッドの「ウルフドッグ」、豚+イノシシの「アイロンエイジピッグ」、シマウマ+馬・ロバ・ポニーの「ゼブロイド」、シマウマ+馬の「ゾース」、シマウマ+ロバの「ゾンキー」、シマウマ+ポニーの「ゾニー」、雄ヒョウ+雌ライオンの「レオポン」など、全部が単なる成り行きではなく、興味本位で人為的に生まれたものも多く見当たり、いつからか、どこかで一線を越えてしまった人間の心理に思いをめぐらせている自分に気づきました。
今、ちょうどコペンハーゲンで国連の環境サミットが開かれていますね。もう少し気候変動などが生態圏に与える影響を知りたいと思っています。
12月15日 五嶋みどり

