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作品解説
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2009.05.24
リヒャルト・シュトラウス
カテゴリー:作品解説

(1864年ドイツ、ミュンヘン生まれ、1949年ガルミッシュ=パリにて死去)

ヴァイオリン・ソナタ 変ホ長調 作品18 (1887-88年作曲)
(Violin Sonata in E-flat Major, Op. 18)

第1楽章: Allegro, ma non troppo
第2楽章: Improvisation: Andante cantabile
第3楽章: Finale: Andante - Allegro

リヒャルト・シュトラウスは、人生の大部分を活発な音楽制作活動に捧げた人物です。プロのホルン奏者を父にもつシュトラウスは、音楽に囲まれて育ちました。ピアノのレッスンを4歳のときに始め、2年後には作曲を始めていました。そして亡くなる1年前の1948年、健康状態の悪化でやむなく筆を折るまで、作曲活動は続けられました。今日では作曲家として想起されるシュトラウスですが、名高い指揮者でもあり、当時のドイツの作曲家兼指揮者として、グスタフ・マーラーと並び称されました。

シュトラウスは幼少の頃、大変保守的な父親の監督の下、ハイドン、モーツァルト、ベートーヴェンやシューベルトといった古典作品について、徹底した教育を受けました。シュトラウスの父親が、当時アバンギャルドで前衛的と考えられていたワーグナーの音楽を嫌悪していたにもかかわらず、後に息子がワーグナーの音楽の強力な支持者・理解者となり、まして1880年代後半に入り、シュトラウスがワーグナーに次いで、最も重要な進歩的ドイツ人作曲家と見なされるようになったのは、大変皮肉なことです。

シュトラウスを神童と呼ぶ人はあまりいませんが、16歳になるまでに、作品は出版・演奏され、その頃のドイツの音楽界では権力のあったハンス・フォン・ビューローに「ブラームス以来の注目株」と呼ばれていたこと、また、後に交響詞やオペラを発表し、交響的な音と形式のコンセプトを再定義するなど、早い時期からその才能は注目されていました。

シュトラウスの『ヴァイオリン・ソナタ』は、20代前半に作曲されました。8歳のときにヴァイオリンを始め、1882年には既に『ヴァイオリン協奏曲』を作曲していたことからも、彼がヴァイオリン音楽に造詣が深く、楽器についても熟知していたことは明白で、ヴァイオリンに超絶技巧を求める室内楽曲が多いのも頷けます。

『ヴァイオリン・ソナタ』は、シュトラウスの最後の“古典的”な作品と見なされています。1890年以前にはあまり多くの室内楽を作曲していませんが、その頃の作品には保守的な父親の影響がまだ残っており、古典的な形式を踏襲しています。

彼の妻となるソプラノ歌手のパウリーネ・デ・アーナとの恋愛中に、この『ヴァイオリン・ソナタ』は作曲されました。若いエネルギーと希望に溢れた作品で、後の作品で顕著となる彼独自の音楽言語が既にこの曲の中には感じられ、特に第2楽章では、熱烈な歌のような旋律が後に作曲される彼の歌曲やオペラを彷彿とさせます。ヴァイオリンとピアノの2つのパートが濃密に書かれ、メロディーラインが交錯する交響的な曲想は、ソナタでありながら、まるで2つの楽器がダブル・コンチェルトを弾いているかのようで、シュトラウスが若い頃に作曲した『チェロ・ソナタ』、『ピアノ・ソナタ』、『ヴァイオリン・ソナタ』の中では、最も成熟した作品であると考えられています。

第1楽章の冒頭は、短く、ファンファーレのようなピアノで始まり、すぐに思慮深い、悲しみに満ちたヴァイオリンの旋律にとってかわられます。しかし、この沈んだ雰囲気は長く続かず、2つの楽器がすぐに高音域へ上り詰めます。第2楽章は、Improvisation(即興的に)と表記されており、シュトラウスはヴァイオリンを歌い手のように扱っています。伝統的なa-b-aの形式で書かれたこの楽章のaの部分は特に甘美です。bの部分は、楽章の中間部で、気まぐれで即興的ですが、絶えず優雅です。この中間部分は、ヴァイオリンにミュート(弱音器)を装着して演奏されます。第3楽章は、平穏でありながらもドラマティックな導入部がすぎると、勇壮で華麗な音楽へと突入していきます。

この作品の特徴として、付点音符と三連音符がミックスされたリズムパターンがあります。第1楽章と第3楽章で、この形が全体的に見られ、繰り返し使われるこのリズムが、3つの楽章を見事にまとまった一つの作品にしています。

シュトラウスの『ヴァイオリン・ソナタ』は、ヴァイオリンのために書かれた作品群の中では、最も完成されている作品とは言われていませんが、昨今の主要なヴァイオリニストたちのレパートリーには欠かせない曲であり、心を打つメロディーは今日の聴衆も魅了してやみません。



2002年五嶋みどり、2006年改訂
(編・訳:花田由美子)


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