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USC便り Vol.3

2014.02.28

USC便り Vol.3
今年も恒例の「バッハ・ウィーク」がやってきました。
生徒たちはバッハのソナタとパルティータ漬けの1週間を過ごしました。
今年で5回目となる「バッハ・ウィーク」では新しい試みがなされ、Ms. Gotoの
生徒たちがロサンゼルス近郊の大学の音楽学部にあるチェロのスタジオの
生徒たちと、ヴァイオリンとチェロのために書かれたバッハの無伴奏曲を一緒に
演奏するリサイタルが開かれました。また今年は演奏する生徒の数が多いため、
Ms. Gotoにとってご自分は演奏されない初めての「バッハ・ウィーク」となりました。バッハには無伴奏のヴァイオリンのためのソナタとパルティータ以外に、
チェロの無伴奏組曲があり、チェリストのバイブルともなっています。
Ms. Gotoの提案でなされたこの合同リサイタルはUSCともう一つの大学で
2回開催され、一つのリサイタルにつき3名のヴァイオリンの生徒と2名の
チェロの生徒が演奏することになりました。観客にとっては、ヴァイオリンと
チェロで奏でられるバッハのソロ曲を交互に聞くことのできる珍しい機会となり、
バッハのソロ曲の奥深さを感じることができたのではないでしょうか。バッハのソロ・ピースであるソナタやパルティータは、1曲の中の1楽章、それも
そのほんの一部だけを大学入学のオーディションなどで要求されることが多く、
この「バッハ・ウィーク」がなければ、生徒たちは一つの曲として通して弾くこと
はあまりありません。通して弾くことによって、バッハの曲をより深く理解できる
というMs. Gotoの信念から生まれた「バッハ・ウィーク」は生徒たちにとって
またとない学びの場でもあります。でも普段通して演奏することがあまりなく、
その上演奏するのが難しい曲でもあるため、どちらの大学の生徒もリサイタル
の前はかなり緊張しているようでした。また弾き慣れている自分たちのキャン
パスから離れて、他大学で演奏するというのも緊張する一因になったかもしれません。

生徒たちは果敢にもソナタやパルティータ、そして組曲を弾ききり、観客の
暖かい拍手と歓声に包まれました。Ms. Gotoはコンサート当日にどんなこと
をすればいいかなど、あまり細かく注意しないと言います。例えば、USCでの
リサイタルの日に生徒たちは事前までオーケストラのリハーサルに出席していました。
「オーケストラの後にあまり練習しすぎないように」とは伝えても、それ以外どう
すべきかという点は敢えて自分たちで経験を通して学んでいくように見守るのも、
プロの演奏家を育てるのには必要なのでしょう。生徒たちは自分の置かれた
状況で、どうしたらベストが尽くせるのか、自分に一番適切な準備方法はどの
ようなものか、ということをこのような機会に実地で学んでいくのが最適なのか
もしれません。また緊張からか思ったように弾けなかった生徒に対しても、
Ms. Gotoはそれを経験の糧として次に活かせるようにと配慮されているようでした。

二つのキャンパスで行われたコンサートに参加した観客の1人が生徒の完成度
の高さに驚きながらも、先生とは違う弾き方であったり、曲に対して異なった
アプローチをとっていることに気づき、その旨を尋ねました。Ms. Gotoのお答えは
「間違いはきちんと直すけれど、どうやって弾いたらいいかというのは押し付ける
のでなく、考えさせるようにしている」というものでした。生徒の自主性を重視しながら、
それぞれの音と音楽性を大切にしているMs. Gotoの教授法が生徒たちの演奏に
見られるコンサートとなりました。

それにしても、生徒たち以上にMs. Gotoとチェロの先生がコンサート前には一番
緊張していたようだったのが、生徒想いの姿が見えて微笑ましくもありました。

文責:森 桂子